入れ歯(義歯)

歯を失ったままにするリスクと
入れ歯の必要性

歯を失ったままにするリスクと入れ歯の必要性

歯を失った場合、そのまま放置すると、さまざまな問題が連鎖的に起こります。

  1. 歯の移動が引き起こす悪循環 まず、失った歯の隣にある歯が、空いたスペースに向かって傾いてきます。また、噛み合っていた反対側の歯が、噛む相手を失って伸びてきます。これらの歯の移動は、噛み合わせ全体のバランスを崩し、さらなる歯の喪失につながる悪循環を引き起こします。
  2. 噛む力の低下と
    顎関節への負担
    噛み合わせのバランスが崩れると、特定の歯に過度な力がかかるようになり、その歯が早期に悪くなってしまいます。さらに、片側だけで噛む癖がつくと、顎の関節に負担がかかり、顎関節症を引き起こすこともあります。奥歯を1本失うだけで、噛む力は約40%も低下すると言われており、食事にも大きな影響が出ます。
  3. 顎の骨が痩せる 歯を支えている顎の骨は、噛む刺激がなくなると徐々に痩せていきます。骨が痩せると、将来的に入れ歯を作る際に安定が悪くなったり、インプラント治療が難しくなったりする可能性があります。
  4. 放置期間の長さと
    治療への影響
    前歯を失った場合は、見た目の問題だけでなく、発音にも支障が出ることがあります。歯を失った部分を放置する期間が長いほど、治療の選択肢が限られ、治療が複雑になっていきます。

入れ歯以外の治療選択肢との比較

歯を失った部分を補う方法には、入れ歯の他に、ブリッジとインプラントがあります。

ブリッジは、失った歯の両隣の歯を削って土台にし、連結した被せ物を装着する方法です。固定式なので違和感が少ないという利点がありますが、健康な歯を削る必要があることや、土台となる歯に負担がかかることが欠点です。

インプラントは、顎の骨に人工の歯根を埋め込み、その上に人工の歯を装着する方法です。天然歯に近い噛み心地が得られ、他の歯に負担をかけないという利点がありますが、手術が必要なこと、治療期間が長いこと、費用が高額になることが欠点です。

入れ歯は、歯を削る必要がなく、手術も不要で、比較的短期間で治療が完了し、費用も抑えられるという利点があります。

合わせて読んでほしい!
インプラントについて

自分の歯のように噛める、インプラント治療について

入れ歯の種類と
保険診療・自費診療の違い

入れ歯は大きく分けて、「部分入れ歯」と「総入れ歯」の2種類があります。

部分入れ歯

部分入れ歯は、1本から複数本の歯を失った場合に使用します。
部分入れ歯は、人工歯、床(歯茎に接する部分)、クラスプ(残っている歯にかける金属のバネ)の3つの要素で構成されています。
クラスプを残っている歯にかけることで、入れ歯を固定します。

保険診療の部分入れ歯は、床の部分がレジンと呼ばれるプラスチック樹脂でできています。レジン床は厚みがあるため、装着時に違和感を感じることがあります。また、クラスプが金属製で目立つため、見た目を気にされる方もいます。しかし、修理がしやすく、費用が抑えられるという利点があります。

自費診療では、床の部分を金属(チタンやコバルトクロム合金)で作ることができます。
金属床は強度が高いため薄く作ることができ、装着時の違和感が大きく軽減されます。
また、熱伝導性が良いため、食べ物の温度を感じやすく、食事をより楽しめます。さらに、ノンクラスプデンチャーという、金属のバネを使わない審美性の高い入れ歯もあります。

部分入れ歯

総入れ歯

総入れ歯は、上顎または下顎のすべての歯を失った場合に使用します。歯がないため、クラスプで固定することができず、床が歯茎や顎の骨、粘膜に密着することで吸着力を利用して安定させます。

保険診療の総入れ歯も、床がレジン製です。上顎の総入れ歯は、口蓋(上顎の天井部分)全体を覆う形になるため、比較的安定が良好です。
下顎の総入れ歯は、舌の動きを妨げないように床の面積を小さくする必要があるため、上顎に比べて安定させることが難しくなります。

自費診療では、金属床を使用することで薄く快適な総入れ歯を作ることができます。また、シリコン素材を床の内面に使用したコンフォートデンチャーという入れ歯もあり、これは歯茎への当たりが柔らかく、痛みを感じにくいという特徴があります。

総入れ歯

入れ歯の製作過程と
調整の重要性

入れ歯の製作過程と調整の重要性

入れ歯の製作には、複数回の通院が必要です。精密な入れ歯を作るためには、それぞれの工程を丁寧に行うことが不可欠です。

  1. 口腔内のチェック・事前治療

    お口の中の状態を確認し、必要に応じて歯周病の治療や、残っている歯の治療を先に行います。歯周病や虫歯がある状態で入れ歯を作ると、治療後に歯茎の形が変わってしまい、入れ歯が合わなくなってしまいます。

  2. 型取り

    お口の型取りを行います。部分入れ歯の場合は、残っている歯や歯茎の形を正確に記録します。総入れ歯の場合は、歯茎や顎の骨の形だけでなく、頬や舌の動きも考慮した型取りを行います。この型取りをもとに、歯科技工士が模型を作製します。

    歯周病や虫歯がある状態で入れ歯を作ると、治療後に歯茎の形が変わってしまい、入れ歯が合わなくなってしまいます。

  3. 噛み合わせの決定

    噛み合わせの高さや位置を決定する工程に入ります。噛み合わせは、顎の位置や筋肉のバランスに大きく影響するため、慎重に決める必要があります。

    噛み合わせが高すぎると顎の関節に負担がかかり、低すぎると顔の輪郭が変わったり、口角が下がったりする原因になります。

  4. 試適・調整

    人工歯を並べた状態の入れ歯(ろう義歯)で、歯の色や形、並び方を確認していただきます。この段階で修正を加え、最終的な入れ歯を完成させます。

装着後の調整が成功の鍵

入れ歯が完成して装着した直後は、多くの場合、違和感や痛みを感じます。これは、お口の中に異物が入った状態に慣れていないためです。新しい入れ歯に慣れるまでには、通常2週間から1ヶ月程度の期間が必要です。

この期間中、数回の調整が必要になります。実際に使用していただくことで、当たって痛む部分や、噛み合わせの微調整が必要な部分が明らかになります。痛みを我慢して使い続けると、歯茎に傷ができたり、噛み合わせがさらにずれたりする原因になるため、痛みがある場合は早めにご来院ください。

また、入れ歯は時間の経過とともに、歯茎の形の変化に伴って合わなくなることがあります。定期的に調整や裏打ち(リベース)を行うことで、長く快適に使用することができます。

装着後の調整が成功の鍵

入れ歯を長持ちさせる
日々のケアと注意点

入れ歯を清潔に保ち、長く使い続けるためには、適切な手入れが欠かせません。

入れ歯の清掃方法

食事の後は、入れ歯を外して流水で洗い流します。入れ歯には、目に見えない細かい傷がたくさんあり、そこに細菌が繁殖しやすいため、毎食後の清掃が理想的です。

入れ歯専用のブラシを使い、優しく磨きます。一般的な歯磨き粉には研磨剤が含まれているため、入れ歯を傷つける可能性があります。入れ歯専用の洗浄剤を使用することをお勧めします。

就寝時は、入れ歯を外して休むことが基本です。歯茎を休ませることで、粘膜の血行が改善され、健康な状態を保つことができます。
外した入れ歯は、乾燥すると変形する恐れがあるため、必ず水や専用の保存液に浸けておきます。
週に2〜3回は、入れ歯洗浄剤に浸けて消毒することで、より清潔に保つことができます。

入れ歯の清掃方法

残っている歯のケアも重要

部分入れ歯を使用している場合、残っている歯のケアも非常に重要です。クラスプをかけている歯は、通常よりも汚れが溜まりやすく、虫歯や歯周病のリスクが高くなります。

入れ歯を外した後は、必ず残っている歯も丁寧に磨き、デンタルフロスや歯間ブラシも使用して、歯と歯の間の汚れを除去することが大切です。

定期的な歯科検診も欠かせません。入れ歯の状態だけでなく、残っている歯の健康状態や、歯茎の変化も確認します。早期に問題を発見することで、入れ歯の寿命を延ばし、残っている歯を長く保つことができます。

残っている歯のケアも重要

よくある質問

入れ歯は何年くらい使えますか?

入れ歯の寿命は、使用状況や手入れの方法、お口の中の変化によって異なりますが、一般的には3〜5年程度が目安です。ただし、定期的な調整や裏打ちを行うことで、より長く使用できることもあります。

歯茎は年齢とともに徐々に痩せていくため、入れ歯と歯茎の間に隙間ができて、ガタつきや痛みが出てくることがあります。そのような場合は、裏打ちという処置で入れ歯の内面に材料を追加して適合を改善するか、新しい入れ歯を作り直す必要があります。

入れ歯を入れたまま寝てもいいですか?

基本的には、就寝時は入れ歯を外して休むことをお勧めします。入れ歯を外すことで、歯茎の粘膜を休ませることができ、血行が改善されます。また、唾液による自浄作用も働きやすくなります。

ただし、総入れ歯を長年使用されている方で、外すと顎の位置が安定しない場合や、噛み締めの癖が強い場合には、装着したまま就寝していただくこともあります。個別の状況に応じて判断しますので、ご相談ください。

入れ歯が合わなくて痛いのですが、自分で調整してもいいですか?

いいえ、ご自身で入れ歯を削ったり、曲げたりすることは絶対に避けてください。自己流の調整は、入れ歯の破損や、噛み合わせの悪化を招きます。

痛みがある場合は、市販の入れ歯安定剤で一時的に対処することは可能ですが、根本的な解決にはなりません。痛みの原因は、入れ歯の特定の部分が強く当たっていることや、噛み合わせのバランスの問題など、さまざまです。歯科医院で適切な調整を受けることで、快適に使用できるようになります。

入れ歯洗浄剤は毎日使う必要がありますか?

毎日使用する必要はありませんが、週に2〜3回程度の使用をお勧めします。入れ歯洗浄剤には、ブラシでは落としきれない細菌や汚れを除去し、消毒する効果があります。

ただし、洗浄剤に浸けるだけでは不十分で、必ずブラシによる物理的な清掃と組み合わせることが大切です。
洗浄剤の種類によっては、入れ歯の金属部分を変色させることがあるため、使用方法をよく確認してください。また、熱湯で消毒しようとすると、入れ歯が変形する恐れがありますので、必ず水かぬるま湯を使用してください。

保険の入れ歯と自費の入れ歯、どちらを選べばいいですか?

まずは保険診療の入れ歯から始めて、使用感を確かめてから自費診療の入れ歯を検討されることをお勧めします。保険診療の入れ歯でも、適切に製作し調整を行えば、十分に機能を回復することができます。

一方、より快適さや審美性を求められる場合は、自費診療の入れ歯が適しています。金属床は薄くて違和感が少なく、食べ物の温度も感じやすいため、食事をより楽しめます。ノンクラスプデンチャーは金属のバネがないため、見た目が自然です。

ご予算や優先される点を考慮して、最適な選択肢をご提案いたします。